顎変形症とはどんな病気でしょうか?
「顎変形症」とは聞き慣れない言葉ですね。これだけだと、顎がどんどん変形してしまう病気のように感じてしまう方もおられますが、そうではありません。
顎変形症は、上顎または下顎の骨自体の形や大きさ・位置のバランスが崩れて起こり、かみ合わせに支障をきたします。また、顎のバランスの崩れによって顔貌が非対称になり歪みが出ている場合にも顎変形症と診断される場合があります。顎変形症は審美的な問題だけでなく、噛み合わせが悪くて噛みにくい・話しにくいなどという機能的な問題も起こします。
顎変形症には上顎前突症、下顎前突症、開咬症、左右の顎骨の非対称症、下顎後退症(小下顎症)などがあります。
顎変形症の治療法
このような顎の骨のバランスからくる噛み合わせや審美的な問題を改善するには、歯を動かして治療を行う矯正歯科治療と顎の骨を矯正する外科的矯正治療を組み合わせた治療を行うことになります。
顎変形症に対する手術には顎骨全体を上下、前後、左右に移動する「骨切り術」と呼ばれる手術と、歯を含む骨の一部だけを切って動かす手術の大きく2種類の手術法があります。原則として手術前の術前の矯正治療を行ってから、顎の骨の成長が終わる時期に外科手術を行います。手術は全身麻酔下で口の中から行うので、顔の外にずっと残る手術痕を作る事はありません。手術後、顎間固定という上下の噛み合わせを固定した状態になりますので、この固定期間の1〜2週間入院する必要があります。手術後には、最終的な噛み合わせを調整するための術後の矯正治療を行います。術後の矯正治療の終了後は、取り外しのできる装置などで歯並びを保つ保定を行って定期的な経過観察を行います。
手術による矯正治療を組み合わせることで、歯だけを動かす矯正治療だけでは改善が難しかった顎変形症による審美面・噛み合わせ・発音の問題が大きく改善されるので、外科的矯正治療を選択された患者様は「思い切って治療を受けてよかった」とおっしゃる方が多くおられます。
顎変形症の治療はどこで受けられるのですか?
顎変形症に伴う矯正治療に対しては健康保険が適応となります。これは手術前後の矯正治療と、手術・入院費用すべてが含まれます。けれども、顎変形症のすべての治療を保険診療で行うためには一定の条件を満たす必要があります。
顎変形症の矯正歯科治療が保険適応となるためには、矯正歯科治療を受ける医療機関が厚生労働大臣の定める施設基準を満たす「顎口腔機能診断料算定の指定機関」である必要があります。もし、この条件を満たしていないと、たとえ顎変形症という診断を受けても、健康保険適応の矯正歯科治療は受けられないからです。「顎口腔機能診断料算定の指定機関」であるかどうかは年度によって変更があります。そのため、受診する医療機関が現在、指定機関になっているかどうかを確認する必要があるのです。
当院は「顎口腔機能診断料算定の指定機関」の指定を受けており、顎変形症の保険診療を行うことができますので、ご安心ください。
顎変形症の治療の費用について教えてください
一般的な矯正歯科治療は自由診療となりますが、顎変形症の矯正歯科治療は保険診療となります。
術前・術後の矯正治療費は請求金額の3割負担の金額となります。
外科手術は手術内容によって上下しますが、同じく手術と入院費用の合計金額の3割負担の金額となります。
手術などの際には一度に高額の医療費をご負担いただく事になりますが、高額療養費制度を使われると、月初めから末日までに医療機関で支払った金額が一定額を超えると超過分の金額が支給されます。
そして顎変形症の矯正治療は治療目的の矯正治療なので、年間の医療費が一定金額を超えると医療費控除の対象になります。
このように、顎変形症の矯正治療は保険診療と高額療養費制度、医療費控除の制度を使って経済的な負担を少なく受けていただけるような配慮がされています。
顎変形症の矯正治療は患者様ご本人やご家族にとっても、少なからぬご負担のかかる治療となりますが、その分、大きな改善も期待できる治療法でもあります。治療についてのご相談や診断・治療内容の詳細については、国の定める設置基準を満たした当院にぜひお問い合わせください。