授乳期間に歯医者で麻酔をするのはOK?
出産後には妊娠中には控えていた積極的な歯科治療が可能になります。これには麻酔を使う歯科治療も含まれます。そして、歯科用の局所麻酔薬で授乳期間中の使用が禁忌にされているものはありません。
けれども授乳中のお母様には、歯科治療で行う麻酔や処方されたお薬が赤ちゃんにどんな影響があるのか気になる事もあろうかと思います。
そこで、授乳期間の歯科麻酔と薬の服用をどうすればいいのかについてご説明しましょう。
麻酔薬や飲んだお薬はどれくらい母乳に移行するのでしょうか?
一般的に歯科麻酔に使われる麻酔薬は、1本1.8ml入りの歯科用キシロカインカートリッジです。麻酔薬は1本を丸ごと使うことはあまり無く、麻酔効果を得られる量だけを使用するので、実際には6〜8割程度の使用量で済むことが多いです。歯科麻酔薬の場合は使用量が少ないのですが、内服薬を服用された時のようにそのごく一部が母乳の中に移行していきます。
体の中に入った薬剤は、約2時間後をピークに母乳中へわずかに移行します。けれども5〜6時間経過すると母乳中に移行する薬の量は半分以下にまで急激に減少します。薬剤濃度がピークの時の母乳100ml中の薬剤移行量は0.1%以下で、これを乳児への薬剤投与量と比較しても1%以下にとどまるため、母乳へ移行する薬剤の量はかなり低いと言えます。
赤ちゃんが生後3ヵ月を過ぎると授乳時間の間隔も空いてくる上に、赤ちゃんの体の代謝機能も向上するので、歯科治療で使用する薬剤が赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性は少なくなります。しかし、生後3ヵ月までの乳児様の場合、授乳間隔が2〜3時間おきで頻回で代謝機能も未熟なため、この期間のお母様は妊娠中の服薬と同様な対応が望ましいとされています。
歯科麻酔や服薬する場合の授乳のやり方を教えてください
できることなら歯科麻酔薬や服用するお薬が母乳に移行して赤ちゃんに影響を与えないようにしたい、とお考えのお母様も少なくないことと思います。
そのような時には、歯科治療が必要な場合は歯科医師に授乳期間中であることをまずお伝えください。現在の赤ちゃんの状態や授乳間隔を参考に、歯科医師が治療計画を立てます。こうして治療に臨めば、麻酔や投薬が必要な治療が予定されるときには、患者様に前もってその日時をお伝えすることができます。
歯科治療の前にはあらかじめ授乳を済ませてからご来院していただくと、お薬の影響の無い母乳を赤ちゃんに与えていただくことができます。もし次の授乳時間まであまり間隔を空けることができず、お薬の影響がご心配な場合には、事前に搾乳して次の授乳分を用意していただいておくという方法もあります。また、搾乳して次回の母乳を用意できない場合には、人工乳で一時的に代用することもできます。
こうすると、麻酔薬や処方されたお薬の影響の残る5〜6時間の間、母乳を赤ちゃんに与えることなく授乳していただくことができます。
このように授乳期間であっても、歯科医師とよくご相談の上で患者様の納得される歯科治療を受けていただく事が可能です。授乳期間中は赤ちゃん中心でお母様の歯科治療は後回しになりがちですが、お母様の健康はお子さまへのよりよいケアにつながります。当院においても、授乳期のお母様に快適で安心な歯科治療を受けていただけるように心がけておりますので、ぜひご相談ください。