噛み合わせが深い、浅い?
歯の噛み合わせの状態には深い・浅いの違いがあるのをご存知ですか?
矯正歯科では、噛み合わせが深い場合を過蓋咬合(かがいこうごう)、浅く上下の歯が当たらない状態を開咬(かいこう)と言います。
それぞれの噛み合わせによって起こってくる問題や原因、治療法についてご説明したいと思います。
噛み合わせの深い過蓋咬合とは?
上下の歯を噛み合わせた時に、上の前歯が下の前歯に覆いかぶさる量が多く、正面から見ると下の前歯が上の前歯に隠れてしまうほど噛み合わせが深くなっているものをいいます。
日常生活では、上顎に下の前歯が強く食い込んで食事の時に痛みを感じる、下の前歯が先に上の顎や歯に強く当たるため奥歯でものが噛みにくいなどの症状が出てくることがあります。
上下の前歯が強く擦れ合う事が多いので、歯が不自然に削れたり歯の先端が欠けたり、前歯の治療をしても被せ物が外れやすく壊れやすいなどのトラブルが起こりがちです。
この状態で放置したまま40〜50代になると、下の前歯に突き上げられていた上の前歯が前の方に突出して出っ歯のようになってしまう方もおられます。
また、上の前歯が下の前歯に突き上げられていると、顎の位置が後ろに下がって下顎の動きが制限されます。
すると顎関節にかかる負担が大きくなり、口を開ける時の顎の引っかかりや顎関節部分の音などが出くるなど、顎関節症を発症させる原因の一つにもなってしまいます。
<過蓋咬合の原因>
遺伝的なものも含め、上下の骨格の発達のアンバランスや、顎関節の位置異常による下顎の圧迫と後退などの骨格や顎関節の異常が原因となる他、上の前歯の伸び過ぎ、奥歯を失った事で前歯の噛み合わせが深くなったもの、歯ぎしり・食いしばり等が影響しているもの、下の前歯が下唇で強く圧迫されて内側に倒れ込んでしまうなどの歯の異常が原因となるものがあります。
<過蓋咬合の治療>
過蓋咬合は奥歯の位置が低くて前歯の噛み合わせが深くなっている状態なので、矯正装置を使って奥歯を引き出して噛み合わせを浅くし、前歯を骨内側に動かして調整していきます。
噛み合わせが深すぎる場合には、バイトプレートというプラスチック製のプレート型の装置を矯正装置の装着前に入れて、噛み合わせを正しい位置へと誘導することもあります。
顎関節症の症状を伴って顎の偏りが大きい場合には、外科手術を伴う矯正治療が選択される場合があります。この場合は、術前に矯正装置で歯を動かした後に、外科手術で顎の状態を整え、再び矯正装置で正しい噛み合わせになるように治療します。
噛み合わせの浅い開咬とは?
開咬は上下の歯で噛み合わせた時に、奥歯は噛み合っていても上下の前歯どうしは当たらないで開いたままになっている噛み合わせの事です。
笑った時に上下の歯がきれいに閉じないので口元に自信の持てない方が少なくありません。
また、上下の歯を閉じて発音する「サ」行や「タ」行の発音が空気が抜けて舌足らずな発音になってしまったり、唇が閉じづらく口を閉じると顎に梅干しのようなシワが出来ることもあります。
前歯付近が噛まず、奥歯が噛む力をすべて負担するため、奥歯が平らに擦り減ったり、治療した奥歯の詰め物、被せ物の割れや壊れといったトラブルが起こりやすく、また過度な力が長年かかることにより歯の周りの骨が吸収し歯周病になるなど、何度も治療した結果歯を抜かなければならなくなり、入れ歯やインプラントを入れてもまた悪くなってしまう・・・そんな悪循環の原因にもなってしまいます。
<開咬の原因>
上下の顎の骨の成長の仕方が影響したものから、歯のでかたや生える場所が影響しているものもありますが、小児期の哺乳瓶やおしゃぶりの長期使用、指しゃぶり、唇を噛む癖、舌を前方に突き出す癖、ペンなどの棒状の物を噛む癖、吹奏楽等の影響、あまりよく噛まないで食べる習慣などが原因となることもあります。
<開咬の治療>
開咬の原因が、癖などの後天的要因の場合、小児期では特に原因となる習癖を取り除き、正しい舌や唇の機能訓練をすることで、開咬が改善に向かいます。
特に成人の場合や開咬の原因が骨格的な場合、舌や唇、咀嚼筋の機能訓練、ワイヤーを使った矯正装置に加え、矯正用のゴムやミニインプラントなどを組み合わせた矯正治療が必要な場合があります。
いかがでしたか?噛み合わせが深い・浅い事によって起こってくるトラブルが思ったよりも多く、放置しておくと大きな問題になりかねないことがご理解いただけたのではないでしょうか。
過蓋咬合も開咬も早くから治療を始めれば起きてくる二次的なトラブルや障害を最小限に抑えて、審美面・機能面共に大きな改善が期待できます。気になる場合にはぜひご相談ください。