歯科麻酔が効かない原因は?体調や体質?
歯科治療といえば「痛そう」とまず思い浮かべる方も少なくないと思います。そのため歯科治療で使われる麻酔が効くか効かないかに、関心のある方も多いのではなのでしょうか?それでは歯科麻酔の麻酔効果を左右する原因には何があるのか、ご紹介しましょう。
歯科麻酔が効きにくい体質や体調ってあるのですか?
まず、歯科で使用する局所麻酔そのものに「効きにくい体質」が明確に存在しているわけではありません。けれども、麻酔薬をはじめとする体に取り込まれた化学物質は、肝臓でシトクロムP450という分解酵素の働きを受けて分解されるので、この酵素の働きが強くなると体内に取り込まれた化学物質が速やかに分解されてしまい、麻酔薬が効きにくくなります。
お酒に含まれるアルコールや注射や内服薬に含まれる成分も、シトクロムP450の作用を受けて分解されます。ところが、普段から大量のアルコールを摂取したり、抗うつ薬や向精神薬、頭痛薬などの鎮痛薬を長期間にわたって常用していると、「酵素誘導」という現象が起きて分解酵素の量が増え、これらの物質を速く分解するように身体が変化していきます。すると、麻酔薬や鎮痛薬が速く分解されて薬が効きにくくなります。
もし患者様に常用しているお薬があったり、アレルギー体質やぜんそくなどの持病がある場合には、つねにお薬手帳を携帯して歯科を受診されるのが良いでしょう。
また、体調があまりよくない時に歯科麻酔で治療を受けると、思わぬ症状が起こることもあります。睡眠不足などで抜歯治療を行う時に、なかなか麻酔が効かずに麻酔量が通常よりも多く必要になったり、治療後もフワフワとした違和感を感じられる方もおられます。
難しい抜歯治療など体に負担のかかる歯科治療の際には、無理をされずに体調を整えてから望まれることをお勧めします。
歯科麻酔を効きにくくする局所的な原因とは?
注射で行う歯科麻酔は、歯ぐきに注射した麻酔薬が骨の内部に浸透して歯根周囲から歯の内部へと伝わり、神経の働きを一時的に止めます。痛みなどの刺激は電気信号として歯の神経から脳へと伝えられるのですが、局所麻酔薬はこの電気信号をブロックして脳に伝わらないようにして痛みを抑えるのです。
この麻酔薬の作用に大きな影響を与えるのが、治療する歯の周囲の組織のpHです。
麻酔薬はpHが小さくなると(酸性に偏ると)効きにくくなります。
歯の神経や歯肉、歯根の周囲に強い炎症があると組織内は酸性に偏るので、炎症が強ければ強いだけ麻酔が効きにくくなるというわけです。
虫歯を治療しないまま長期間放置したり、化膿して歯の周囲に膿が溜まっている状態では、骨の中へばい菌が侵入していかないように骨の硬さや密度が増して石のように硬くなってしまうことがあります。骨が硬くなると麻酔薬が骨の内部へ染み込みにくくなってしまうため、歯の神経の所までなかなか到達できません。そのため、なかなか麻酔が効きにくくなってしまうのです。
また、同じ患者様でも下顎の奥歯は最も骨が硬く密度が高いので、上顎の歯や前歯に比べると麻酔が効きにくくなることがよくあります。
このように歯科麻酔が効かない原因には、治療する歯の周囲の組織の状態が原因となる場合と、患者様の全身状態が原因になる場合が考えられます。歯科医院で歯科麻酔治療を受けられる場合には、患者様の今までの病気のご経験や現在の服薬されているお薬の有無、治療前後のスケジュールにご無理が無いかを歯科医師にお伝えください。患者様にとって少しでも痛みの少ない快適な歯科治療となるように、当院でも努めさせていただきたいと思っております。