出っ歯とはどのような状態でしょうか?
出っ歯(上顎前突)は、上顎の前歯が前に出ている噛み合わせのことを言います。
出っ歯の場合、上顎の前歯部が突出しているために意識して唇を閉じようとしないとそのままでは口が開いてしまい、ポカンとした表情になりがちです。
これを防ごうと唇を意識的に閉じようとすると、唇の周りの筋肉に強い緊張が生じてあごの部分に梅干しの種のようなしわができたり、むっとしたような表情になります。このような美容上の問題に加えて、出っ歯により唇が閉じにくいと口呼吸になりやすいので、口腔内が乾燥して歯周病などを悪化させる原因にもなります。その他にも、サ行の発音のしにくさ、前歯部の噛みにくさからくる咀嚼効率の低化、転倒による歯の外傷リスクなどがあります。
出っ歯には前歯が大きく前方に傾斜して突出している症例と、上顎全体が下顎に比べて大きいために口元に突出感がある症例、下顎が小さいか後退している症例があります。
成長期のお子様の場合、上顎の成長を抑える治療や下顎を前方に成長させる治療を行えますが、顎の成長が止まった大人の場合は、歯の移動によって歯の周囲の骨(歯槽骨)の形を整えたり、歯の軸の強い傾斜を弱くして上顎の突出感を軽減させる治療を行います。
出っ歯の矯正治療の方法は?
出っ歯と一口に言っても、その程度や成因は患者様お一人お一人によっても異なります。
「矯正治療」の範囲を超えて、上顎そのものの大きさが大きい場合や、下顎の後退が著しい場合、外科的に上顎のサイズを小さくする手術や下顎を前方に移動する手術を行いますが、ほとんどの場合、矯正治療だけで治療できます。
出っ歯の矯正治療では、前方に突出した上顎前歯部を後方に移動させるスペースを作る必要があります。その方法の一つとして、上顎の一番奥の大臼歯を後方に移動させてスペースを作った後、他の歯も順番に後方に移動させていき、上顎の歯列全体を後方に移動させる方法があります。
この方法ですと後方へ移動できる量は上顎の歯槽骨の末端までに限られ、また口腔の奥行きが短い日本人には利用できる範囲に制限や限界があるのが実情です。
出っ歯の矯正治療の場合、患者様ご自身が口元の突出感をどの程度改善されたいのか、また実際にどの程度上唇を後退させるのかを考慮しつつ治療計画を決定していきます。
抜歯せずに治療する場合、治療期間の長期化や治療後の後戻りなどのリスク、口元の審美性などを考慮した上で判断しますが、中程度以上の出っ歯の症状の場合は、きちんとした治療結果で患者様にご満足していただくために抜歯が必要なことが少なくありません。
その場合は小臼歯を抜歯してスペースを確保することが一般的です。
治療後の状態の目安はどのような状態ですか?
出っ歯の矯正治療のゴールは、横顔で鼻の先端と顎の先端を結んだ線(Eライン)より突出した唇をEラインよりもやや内側に位置させ、美しい口元を作ること。
そして多くの場合上顎が前突していることで前方にずれている噛み合わせを正常に回復させることにあります。
治療終了後にこの状態を満たすと審美面・機能面でも申し分のない歯並びを得ることができます。その点も考慮されて治療法をご検討ください。